折紙による電球

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ンセプト

 この作品をデザインする時に頭に浮かんだコンセプトは「立体感を魅せること」、「それっぽさ」そして「透かし折り」の3つでした。 (もし英語で透かし折りを上手く訳している例があれば教えていただきたいです。 この記事の英訳ではOpenwork foldingとしてみましたが…いまいち)

 この作品を作ろうとしていた当時は、3Dプリンターを購入して歯車やチェスの駒など、自分でモデルを作ったり、フリーのものを使わせていただいて作っていました。 モデルの作成にはCADやBlenderを使用していたのですが、その操作感が実に面白いのです。見ている画面は当然2Dのモニターなのですが、そこで3Dのモデルをぐりぐりと描いていく感覚は今までに鍛えたことのない脳の部分を働かせているようで難しくもあり、何より新鮮でした。 その「立体をいじる感覚」は3Dモデリングをしていく中で徐々に自分のものになりました。同時にこの感覚は自分が折り紙で何かを表現している過程に頭の中に展開している空間を補強しているという考えに至りました。

 この考えが正しいのか、どうにも気になったのでなにか立体感というテーマが映えるものはないか、と探した結果見つけたのが、この電球という題材です。 初期構想では形の面白さ、一般性から卓上ランプを折ったら面白いかもしれないと思っていました。スケッチにもランプの方を先に描いています。 しかし立体構造の試作という位置付けにしては、ランプは少々形が複雑すぎたので、ランプとセットに思いついた電球を折ることにしました。

  電球、という題材を思いついたのにはもう一つ理由があります。それは以前にも電球という題材に取り組んだことがあるから、なのです。 当時からフィラメントを透かし折りで表現するというアイデアはありましたが、自分の力量不足で平面的な作品にしてしまった結果、微妙な出来上がりだったのを覚えています。 そういう経緯もあり、「立体的表現」には難しくも表現の幅を大いに広げる可能性のある手法だと感じていたのです。

ザイン

デザインの過程
初期構想

 まず考えたのは角をどの位置に配置するか、ということです。

 フィラメントを透かし折りで表現するとすれば、ある程度の長さの独立した角を確保する必要があります。 1本の長い角からフィラメントを造形することは、当然ほかの部分への割り当てを考えれば無理といってもいいでしょう。従って2本の角をつなぎ合わせるという方法をとりました。

 初期構想では上半分の角カドをフィラメントに割り当てようとしていますが、そうすると紙の下部に領域を持て余してしまいます。

 これは電球の金具部分を立体的に表現するために紙の領域をある程度確保しておきたいという思惑からの案でしたが、コンセプトを考えれば金具部分を省略するほうが理にかなっています。 そこでフィラメントの角は下半分の角カドから、上半分をガラス部分に割り当て、金具部分を表現する領域があるかどうか、まずは試作をしてみることにしました。

 この段階では楕円形のシルエットを表現しようとしていますが、結果としてはできていません。 より電球という形をデフォルメして、忠実な表現よりも「らしさ」を生み出すことにフォーカスを合わせていきます。

 失敗に見える試作ですが、制作過程で立体化と同時に留め折りを組み込む手法を考案できたことは大きな収穫でした。

 また実際に折ってみて、8等分でこの角配置では金具を立体的に表現することは無理だとわかり、平面表現に甘んじることとしました。

 2回目の試作は1回目よりもやや大きいサイズの紙を使用しています。 等分数を12に増やしたため、金具部分がどうなるか試してみましたが、やはり立体化には足りないようでした。

 1回目の試作で大まかな方向性は決まっていたので金具以外は特に躓くことなく最終的な形にまとめ上げることができていました。 透かし折りのために、幅変換の領域と立体化の領域を整理して、後ろから照らしたときに背面の紙が邪魔にならないようにしています。

 つまり、背面を閉じてしまうとフィラメントがうまく透けてくれないという理由から、一部を開放した状態にすることに決めました。 今考えれば単純に光源が弱すぎるという理由もあるので、題材への忠実さを重視するならばこの選択は甘いですね。 結局折りかけのように見えないように、軽く処理をするという妥協で、今回の作品は決着しています。

成形

 オレンジ色のLEDに透けてフィラメントがいい感じに透けています。

 上部を閉じるために、邪道ですがセロハンテープを使用しています。 フィラメントは2つのカドを糊付けした後にジグザグに折って表現しています。

 裏側からみた感じも、本来の電球とは違いますが、解剖図のような趣があってこれはこれで面白いのかもしれません。

後の課題

 折っている中で感じていた課題が3つほどあります。1つは勿論金具部分、そして背面と糊付けの方法です。    

 金具部分が平面表現のため、作品下部の存在感が薄く、全体としてアンバランスになっていることは否めません。 裏側も満足いく形ではないので、なにか別の解決策を考案したいところです。 また、糊付けにセロハンテープを使うのは個人的には好みではないので改善したいところ。この後の作品のワイングラスで抜本的な解決策を取り入れています。

 実は投稿時点では新しいバージョンのものを作成しているのですが、数点課題が残っているのと作成待ちが多いので公開はおそらくもう少し後になります。

わりに

 ここまで読んでいただいてありがとうございました。 何かご指摘や、聞きたいこと等あれば気軽にコメントしていただければと思います。それでは。

Tomoaki. H.

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